2 迫り来る気配

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 総司がおこうの家に引っ越してきたのは、夏に入ってからだった。  伊東派への牽制の意味もあり、ずるずると延ばしていた移動だったが、夏の暑さに耐えかねた総司の衰弱ぶりを目の当たりにした近藤がようやく決断した。伊東との提携も表面上はそれなりにうまくやっているらしい。  おこうは安堵した。これで、姉が出入りしづらくなる。  それに、もしかしたら土方が来てくれるかもしれない。  おこうに会いに、ではないが、自然と総司の世話にも熱が入る。献身的な看病を続ける自分に酔うことで、日々を慰めた。  かつて、新選組の魔剣を操った沖田総司はその体を労咳に侵されていた。もともと丈夫ではなったらしいが、京に上って体験した、盆地特有の暑さ寒さがいけなかった。  労咳は死の病。  これといった薬もなく、ただ弱ってゆく。すでに、総司は喀血を繰り返しているので、重症だった。  この病が怖くないと言えば嘘になるが、姉からも軽く扱われ、贅沢できるが妾に甘んじるしかない立場のおこうに、初めて打ち込めることがあらわれた。さりげなく、しかし心を尽くして総司の世話をする。
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