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体験入部
我の名はオモダカ レイカ。
科学部員だ。
今日理科室にいるのは高二の我と、アボガドロ先輩のみ。
それで科学部員がみんな揃ったことになる。
科学部はひどい風評被害に苦しめられている。部長を教祖とした宗教団体だとか、世界征服を目論む過激派のアジトだとか。なぜか変人の巣窟との根も葉もない噂がたっているため、遠慮して入る人が少ないのだ。
一体どこからそんな意味不明な噂たったんだ。黒幕はどこだ。いるなら出てこい! 科学部の生物兵器バイオハザードの異名を持つ我がこの手で粉砕してやる。
まあいい。
今日は体験入部の初日。
まだ何も知らない子羊一年生を捕まえ、部員を増やすことができるかもしれないのだ!
と思っていたそのとき、ドアが開いた。
「しつれいしまぁーす。ここが科学部ですかぁ」
「新入生か! 歓迎するぞ」
身長が二メートルを優に超える先輩がゆらりと立ち上がる。
「私が部長だ。人間からはアボガドロと呼ばれている。種族はいわゆる神だ」
先輩が優雅に微笑み、微かにのぞく八重歯が光る。
先輩の顔はちょっと猫と似ている。高い身長と不思議にかわゆい顔がなんだかミスマッチで、我は地の果てに住む魔王の卑屈な側近のように、ひとり不気味な笑みを浮かべる。
「か、かみ?」
「君は人間のようだな。なんて名前だ?」
「カメヤマです」
「そうか。カメヤマ君。我が部に入ってくれて本当に嬉しい」
「いやまだ入ると決めたわけでは……」
「君、私が神だからといって怖じ気づきすぎだ。科学部に入ると決意したからには、まずそこを直さなければならない。なあ、オモダカ」
人間、第一印象が勝負。我は新入生に威厳を見せるべく、背筋をまっすぐにして言ったのだ!
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