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一時は1部にいたが、苦戦続きの末に2部に降格してしまった。というのをケンジに教えてもらって、やっと知ったほどだ。
もちろん選手たちは必死にフィールドを駆けた。対戦相手と合わせて22人でボールを奪い合い、ゴールを目指した。しかしながら、揺れるのはいつもこちら側のゴールネットだった。
点を取られ、取り返すこともできず、無情にも試合終了のホイッスルは鳴った。
市立陸上競技場の雰囲気が一気に悪くなる。今日も負けて、選手たちはうなだれている。
(落選を知ったオレも、あんな顔してたんだろうな)
ふと、そんなことを考えてしまった。
(しかし、オレの小説人生もぱっとしなかったが、応援するクラブまでぱっとしないなんて)
観戦を通じて知り合ったサポーター仲間たちと一緒に、得意でない声を出しての声援もしているが。それが届いていないようで……。
「そういえば、今日負けたら最下位じゃないか」
全日本リーグ2部には18クラブが参戦している。ヴェルドゥーラアクアはどうにか頑張って17位だったが、ついに最下位に落ちてしまった。
ブーブーー!
という、ブーイング。不甲斐ない試合を見せられて、サポーターの多くが失望をあらわにしていた。
「ふざけるな、こんなんで1部に帰れるか!」
「何度負けたら気が済むんだよ!」
「もうサポーターやめた!」
試合後の挨拶に来る選手たちに浴びせられる厳しい言葉。対戦相手はこちらのことなどお構いなく、アウェーまで駆け付けたサポーターたちとともに陽気にラインダンスを踊っている。
その落差の激しさたるや。見れたものではない。
陽気なはずの晴れた空だが、自分たちはその空とは別世界にいるようだった。
「ブログもやーめたッ!」
そんな声が聞こえた。それはオレを誘ったケンジだった。
「やめるって」
「ああ、やめる。ここまで弱いとは思わなかった。こんなクラブのために、あくせくブログ書くの馬鹿馬鹿しくてやってられねえよ!」
「……」
激怒するケンジに、オレは絶句し言葉もなかった。
「とにかくやめる、やってられねえ」
「まさか、サポーターまで?」
「そうだ、サポーターやめた!」
あんまりな言い様に思わず呆気に取られた。なにもそこまで言わなくても、と。
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