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「愛してる」
泣いている僕を心配そうに響が見る。
涙をずっと拭ってくれる。
「大丈夫だよ」
「愛してる」
その言葉は、妹がいつもくれた言葉。
もう愛せない妹が残してくれた言葉。
だから、せめて伝えよう。
「響」
ビクンッと跳ねる体。
「僕に言うこと、あるよね……?」
響の目には逃げたいとか後悔とか、あらゆるものがあるように感じる。
「お……オレは」
どうしたらいいかわからない響の髪を撫で下ろした。
「あの時言ってくれたよね」
「え……」
「「死ぬな! 優!!」って」
「っ」
あれは、きっと、落ちてゆく美桜を助けてくれと言う意味だと思う。
母の為にするしかなかった。
響に罪は確かにある。
でも、救えた筈の命を救えなかったのは、僕の責任でもあるんだ。
気づいてやれなかった。
愛してるを返してやれなかった。
「僕は怒ってるんだよ」
「……オレ、お前に!」
「そうじゃない」
ギュウッと響を抱きしめて、響の胸に顔を埋めた。
「助けてって言ってよかったんだ」
響は泣いていた。
夢の中のように。
「僕は響をもう愛してるんだから」
だから、と美桜から貰ったロケットを開けようとした。
『イイノネ?』
「うん。美桜はもう死んだから」
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