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僕がなぜ、バーチャル世界に住んでいるのかと言うと、ストーカー以外の現実世界の誰も信じられなくなった所為だ。
お金が必要なときだけ来る友達、生きるために僕が好きと嘘をついた病弱な女の子、辛いときに支援してくれないのは残酷だと避難する人々。
誰も見たくないし、逢いたくもない。
(ストーカー。今、何してるかな……?)
なんとなくベッドに潜り、ウトウトしていた。
髪を撫でる存在を傍らに感じて、振り返ればそこにストーカーがいた。
「……なっ!?」
「おはよう」
かなり強引に抱きすくめられて、ギョッとする。
「オレの優、見っけ」
ストーカーはとにかく距離を知らない。
いつの間にか、パーソナルスペース内に入ってくる。
「も! 駄目だって……あれ程」
ジタバタしても、ストーカーの腕の中からは抜け出せない。
「どこにだって来るよ。優が呼んでくれるなら」
「……! 呼んで、ない!」
抱きしめられるのは嫌いじゃない。
強引にしてもらえないと、僕は自分からはいかない。
誰でもいいから、グイグイと愛して欲しかった。
だけど、「ありがとう」がなかなか言えなかった。
(恥ずかしいし……)
何より、裏切られた数が、僕から言葉を、勇気を奪っていた。
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