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俺がピノを見ると、牙のようなものが生えていた。まさか、俺を噛み殺すために進化しているのだろうか。だが、ピノを観察しようとしても後の痴話喧嘩が気になる。
「俺の尻もな、出すのが専門だよ!」
「いいや、俺が仕込んでいるでしょ!もう、白波瀬のケツは、俺専用の口だよ!どれだけ、可愛いか知っているか?もぐもぐして、柔らかくて……」
白波瀬が伊東を蹴り飛ばしたらしく、バコンという鈍い音の跡、襖が外れて斜めになっていた。
「俺は、白波瀬には優しくしたよ……薬に頼らずに、正気のまま感じるようにさせたかった」
伊東は薬を精製しても、自分で使用する事はなかった。それは、薬には副作用があり、かつ、自分が造るものは粗悪品だと知っていたからだ。
「即死させたのだってそうだ。俺は、白波瀬を苦しませたくなかった……」
静かになったと思ったら、ギシギシと床が響いてきた。そこで、やっと、居間ではなく寝室でやってもらえば良かったと悟った。
「口から摂取する場合、胃酸との闘いがあった。だから、尻から摂取させる場合もある。でも、その場合は、排出に逆らう事が必要になる」
鼻の粘膜という手段もある。でも、口から摂取し、消化吸収されて全身に回ると、とんでもなく持続する事もあった。
「狂う程の悪夢と、悪寒……でも、無敵になったような高揚感」
伊東の作る薬には、口から摂取するものも多かった。その場合は、胃酸を通過し、吸収される時にズシンとくる効き目があったとい。う。
「俺のは、永遠の夜みたいな薬だった」
でも、夜の中は、まるで悪夢であった。そこから抜け出せない霊が、ピノの中に残っている。
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