第二十一章 黒限ノ夢

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「夜の教会に忍び込んで、白波瀬の指に指輪をはめた。これで、永遠に俺のものになったと心から嬉しかった……そこで初めてキスして、その後、ラブホに行って結ばれた」  男は初めて同士で、ラブホで調べて動画を見ながらだったとか、伊東が床に座り込んで手振りを交えて言っていた。伊東の横に、白波瀬も座り込み、まるでヤンキーのたまり場のようになっていた。車好きだとは聞いたが、もしかして元ヤンキーだったのだろうか。タバコをポケットから取り出して、咥える姿が様になっていた。 「あんな場所に、アレを突っ込まれるとは思ってもいなかった……無理だろ、アレ。しかも最初からだぞ……内臓が口から出るかと思ったわ」 「そういうものでしょ。知らない方が悪い」  睨み合っている二人は、眼光が鋭く、喧嘩になりそうであった。これで恋人同士だったといのは、信じられない。喧嘩になったとしても、俺には止められそうにもない。  だが、白波瀬の目から伊東が視線を背けると、床に向かって話を続けていた。 「三ヵ月、それだけの期限を貰った。白波瀬の罪の意識につけこんで、同棲して毎晩、ヤッた。白波瀬はいい奴で、初めて幸せだと思った。でも、期限付きだったから、幸せだったのかもしれない」 「……伊東の母親を死なせたかもしれない。俺が黒い羽募金を教えたから、伊東の妹が消えたのだと、俺は罪の意識で一杯だった。だから、伊東に抱かれた……それしか、出来なかったから……」  互いに、暗い思いはあったのかもしれない。だが、互いの本音を聞きながら、微妙に眉間に皺が寄っていた。 「……同棲で幸せだっただと?毎日、飯をどちらが造るかで喧嘩だったでしょ。それに、毎晩、毎晩、ヤリやがって……仕事に支障が出たよ……」 「そういうものでしょ。それに新婚は、毎晩したいものなの」  白波瀬は、見た目に反して、キレ易い方だったらしい。伊東の襟首を掴んで怒っていて、殴ろうとしていた。でも、伊東は平然として、白波瀬を睨んでいる。 「毎晩、俺の腕の中であんあん鳴いていて、可愛かった」 「……うるさい」  白波瀬が真っ赤になりながらも、伊東を睨んでいた。 「どういう展開なの、コレ」  俺は展開が分からなかった。そこで、寒河江に説明してもらい、やっと意味が通じた。喧嘩はしているが、基本、仲のいいカップルらしい。 「……でも、終わりがやってきた」
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