第二十ニ章 黒限の夢 ニ

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 人を狂い死にさせてきた伊東は、白波瀬にだけは優しかった。それは、伊東にとって白波瀬が唯一の救いであったせいだ。 「白波瀬を汚していいのは、俺だけだ……それなのに……」  白波瀬は車の整備もしていて、分からないように細工していた。運転の癖を見抜き、少しだけ後押しするものらしい。それは、高速を好む運転者には、高速を出やすくし、更に高速時点からの加速を増すようなものであった。それは、運転手には好評で、気持ちよく運転できると好評でもあった。車の性能を越した改造は、運転手の寿命を縮めてゆく。高速に対する制御や、ブレーキ性能が整っていないのだ。
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