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狭い室内には、カチカチとキーボードを叩く音が響いていた。無言でパソコンの操作をしているのは寒河江で、ボサボサの髪と着崩れたボロボロの服を着ていた。
寒河江は、集中すると飲食も、生活も忘れて、下手をするとトイレも忘れて没頭してしまう。もう死んでいるからいいものの、生きていたら倒れているだろう。
「寒河江、休憩しようよ……」
俺はパソコン画面の横に立ちながら、寒河江を見上げてみた。いつも寒河江は顔色が悪いが、今もかなり悪い。
「もう少しで……何か分かりそうなのですよ」
寒河江は、捜査一課の雨之目からの依頼を受け、パソコンでデーターを分析していた。
「もう少し、もう少しって、ずっと言っているでしょ」
ここは人が生きて生活している現世ではなく、死保留中探索調査委員会で、死が保留になっているメンバーが保管されている場であった。
「でも、もう少しなのです」
俺達のいる四畳半の狭い部屋の中央には、炬燵があった。炬燵には、半纏を着たままペンを手に持ち眠っている、倉田が座り続けていて、その正面には寒河江がパソコンを睨んでいた。ただでさえ狭いのに、炬燵があり、更に男二人が座っているとかなり部屋が狭い。俺は小型化して炬燵の上にいるが、時々、寒河江に手で払われていた。俺は邪魔をしているつもりがないが、寒河江には邪魔に感じるらしい。
「寒河江……」
「市来、邪魔です」
俺は、寒河江に摘ままれて、炬燵から落とされて畳に転がった。
小型化していると、体重が軽いせいかよく転がる。不思議と大怪我はしないのだが、死保の中でもそれなりに痛い。
「寒河江、事件の内容を教えてよ……」
「まとめたら、呼びますよ」
寒河江が、又、集中モードに入ってしまった。
死保(死保留中探索調査委員会)とは、死んでいる者、もしくは、死に近しい状態の者で、自分が死んだ(もしくは、その状態に陥った)原因を知らない者が行く場所となっていた。死保にはチームがあり、それぞれに仕事がやってくる。
人は、何故死に至ったのか知らないと、次のステップに行けないらしい。そこで、死保が調査していた。
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