第一章 人知れず咲く花

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 死保と幽霊には違いがあり、幽霊は死を納得していない者で、記憶には何故死んだのかが刻まれているらしい。そこで、死を納得、もしくは昇華(条件をクリア)すれば次のステップに行ける。しかし、死保の者は、死んでいるのかも、瀕死なのかも分からず、どこに行ったらいいのか分からない状態となっていた。そこで、自分がどうなっているのか、知らなくてはいけないのだが、自分が思い出さなければ、調査が出来ない。  俺達は、自分の記憶が戻るまで、死保で働き続ける。  この死保の部屋は、倉田が小説を書く為に借りていた部屋で、一見、何の変哲もないボロ家なのだが、実際はどこにも繋がっていない、世界から孤立した部屋になっていた。窓の外は、まったりとした闇で、ドアは開く事が出来ない。この狭い空間には、時間もなく、俺達はただ死が保留になって保管されているような状態であった。  俺、市来 大護は、部屋が狭いので、小型化して炬燵の上にいた。しかし、他のメンバーは押入れの中に収納されている。押入れの中がどうなっているのか、俺にはさっぱり分からないが、皆はそこで眠っているという。 「市来、仕事か?」  桜本が押入れから出て来ると、倉田のノートを確認していた。  倉田はこのチームの中心的な存在で、仕事を受付、記録し死保に報告している。倉田は眠ったままでノートに文字を書き続けているが、皆の行動を把握して見ているらしい。  俺達は倉田のノートを見て、仕事の内容を知り、倉田がエンドもしくは終とノートに書くまで、働き続けなくてはならない。  更に死保のメンバーは、仕事をしないと消滅してしまい、成仏できない。そして、仕事が達成できなくても消滅してしまう。倉田の行っている仕事の選択は、実は全員の運命を握っている重要なものであった。 「仕事の依頼は、雨之目さんからなので、殺人事件なのでしょう。先に寒河江が調べていますよ」  俺も倉田のノートを覗き込むと、内容を読んでみた。  死保にはルールが他にもあり、違反行為をしても消滅となり、その違反行為の中には、自分の家族に会う、自分の死について調べる、仕事以外の調査をするなどがある。すると、自分に関わりのある事件には、消滅の危険性が出てくるので出ない方がいい。
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