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そして、内容を読んでから行くメンバーを決めないと、現世で死ぬような目にあい、全員が死保に戻ってしまうような事になったら、依頼が達成できずに消滅となってしまう。
「黒限ノ夢、ですね」
倉田は仕事を引き受けると、まずノートに題名を書く。今回の題名は『黒限ノ夢』となっていた。
「警察の捜査協力なのか……では、まず私が出ようかな」
桜本は、現世で同性であるが、瀬谷という教授と夫婦のような関係になっていた。瀬谷は数学で犯罪を予測していて、警察への協力もしていた。
「そうですね。お気を付けて……」
死保は、仕事を引き受けると、現世へと移動する事ができる。この部屋も、仕事の間はドアから外に出る事ができた。
桜本がドアから出てゆくのを見送ると、俺は押し入れを見た。
「甲斐さ……、……そうか……」
いつもならば、真っ先に死保から出て行った、甲斐が成仏してしまっていた。俺はつい、甲斐を呼んでしまい寂しくなる。
でも、甲斐のお陰で分かった事もある。
死保のメンバーは、自分の死を知っても成仏できない場合があり、それは残るという意思と、未練であった。甲斐は、現世で織田という恋人と大恋愛をし、成仏が加速していった。愛というのは、心を満足させ、成仏を促す作用があるらしい。でも、甲斐は実体が消えるまで、織田と一緒にいる事を選んだ。
俺は倉田のノートを読み始めたが、小型化していると、ノートの上を歩きながら読まなくてはならない。すると倉田は、書くのに邪魔なのか、俺を払って落としていた。
「倉田さん、内容を読ませてくださいよ」
俺は炬燵をよじ登り、ノートを覗き込んだ。
『書き終わるまで待っていてね。危険だからあまり傍に寄ってはいけないよ』
倉田とは、ノートの文字を介して会話をする事ができた。
この部屋は、倉田が小説を書く為に買い取ったもので、そこで死んだと思われる倉田は部屋ごと死保にやってきた。部屋は倉田の身体の一部のようなもので、部屋が書く邪魔になると判断すると、払われたり、飛ばされたりしてしまう。部屋の機能として、邪魔を排除があるらしい。だから、メンバーは押入れに収納となっているのかもしれない。
「あ、官能小説!」
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