第一章 人知れず咲く花

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 調査を進めると、クッキーは総務の女性が、土産で貰ったものを配っていた事が分かった。クッキーだけではなく、チョコなどもあり、各部署に配られたらしい。土産がどこから来たのかと更に調査を進めると、秘書課の女性が、社長と他社を訪ねた時に、個人的に渡されたものであった。  だが、秘書課の女性は、ダイエットのために、菓子類を口にする事はなく、紙袋に入ったまま総務課に渡していた。  秘書課の女性から、行った会社や渡された状況を聞き出すと更に調査が進められた。  秘書課の女性に土産を渡した者は、彼女に片思いしていた、取引先の経理課の職員であった。しかし、その職員が買いにいったわけではなく、後輩が準備してくれたものを渡していた。  その後輩は、その菓子を彼女に頼んで購入して貰っていた。そして、その後輩の彼女も、有名店のクッキーを並んで買うのが嫌で、職場で愚痴っていると、ファンを名乗る男性が買ってきてくれたという。 「結果、出所不明の菓子だったということですね……」 「まあ。そうなるね。このファンというのは、後輩の彼女が食べたいのだと思って、買ってきていた。皆で食べてと渡されていたのに、彼女が一人で全部持って帰ったので、見ていた同僚達がケチだと陰口を言ったと記憶していた」  並んで買うならば、自分が食べたいと、彼女は言っていたと書かれていた。その店では購入数を制限していて。一人一個になっていた。その一個を渡してしまえば、自分が食べる分はない。だから、その彼女は怒っていたらしい。 「ファンという人を探そうとしたけれど、何の特徴も無く、彼女の記憶にも残っていなかった」  菓子箱の封はされていたというが、休憩室に在った時には、蓋も開いていた。どこで毒物が入れられたのか、全く分からなかった。 「捜査は、そこから進展がない」  次は、バレンタインのチョコで、地元アイドルの元に大量のチョコが贈られてきた。その量を食べる事もできず、捨てるのも勿体ないので、施設に寄付された。 「養護施設で一人死亡……リハビリ施設で、二人死亡、一人が重体。他、二人死亡……」  配られた量が多く、かつ、多数の場所に配られていたので原因を特定するのに時間がかかってしまった。菓子を持ち帰って食べた人者も多く、どこでその菓子を入手したのか、判明するまでにも時間がかかり、分かった時には次々と死亡者が出た後であった。
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