第八章 明日を忘れた君へ 三

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「死なないと、生まれ変われないわけね……」  もう既に、人形は危険な生き物になっていた。人形は、俺にウインクはするし、雨之目の手を齧ろうともしていた。 「……新悟に謝っておこう……」  人形を積み込むと、久住の運転で出発した。  時間は夜になっているが、変な映像を見たせいなのか、何も食べたくない。肉団子など、俺の料理の定番であったのだが、二度と作れないような気がする。 「途中、銭湯に寄りますか」  雨之目と雪矢も来てしまったが、公務員的にはどうなのであろうか。許可を取らずに、捜査は出来ないだろう。 「雨之目さん」 「許可は取ってありますし、報告もしているので大丈夫ですよ。鈴木の情報を掴んだら、逐一連絡するように、言われていますからね」  俺は、言いたい事が顔に出てしまうらしい。雪矢は、状況を全く気にせずに、最後尾に座ると爆睡していた。  菅原の映像と、ノートの情報も流れていて、まず菅原を殺した容疑で鈴木は捕まる予定であった。 「鈴木が、解体処理していたのは、主に老人で、失踪届けが出ているようですね」  身元が判明した者もいて、失踪届けが確認されていた。  鈴木のメモは細かくて、手術の跡や傷跡などの記載があったので、身元が分かった者もいる。痴呆による徘徊があったとされていて、七年の経過によって死亡となった者もいた。 「七年も前から、この事件は始まっていたのか……」  七年前といったら、俺はまだ学生であった。鈴木も七年前は学生だったろう。すると、学生でありながら、解体処理をしていたということだろうか。 「鈴木は、中学生くらいから、人を食べ始めていましたよ……ノートの最初の日付とナンバーを見てください」  ノートの日付は、鈴木が社会人になってからのようだが、ナンバーはその時には、既に十三になっていた。今回、保管されていたノートの前に、十三冊あるということだ。  初期のノートは、一年に一冊か二冊というようなペースであったので、その六年前あたりには、記録が始まっていたということだ。 「そんなに、前から……」  いつから、この世の中は、人がいなくなっても、気にしなくなってしまったのだろう。
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