第九章 明日を忘れた君へ 四

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 現場に到着する前に、高速道路で深夜になってしまったので、パーキングエリアで仮眠しておく事にした。死保に来てから、車での仮眠が多くなった気がする。毛布を取り出して眠ろうとすると、横に松下がきていた。 「市来君、枕は必要かな?」  よく、かってに松下を枕にして眠っているが、改めて言われると断りたくなる。 「大丈夫です。隅で眠ります」  どうして隅なのかといえば、やはり寒河江と通信したいのだ。俺は、車の隅に行くと、そっと携帯電話を出した。  久住は木積と別れると言っていたが、その後はどうなったのだろう。そっと寒河江に質問してみると、寒河江はノートの情報を分析している最中であった。 『木積さんは帰りましたよ。ココロさんという方を会うそうです、』  木積が、どうしてココロと会う気になったのかといえば、ココロは久住が真実を見られない相手だと言ったのが気になったらしい。無条件に久住は、相手の真実を見てしまうようだが、どこかで線引きがあるようだ。 「久住さんが、真実を見られない相手……」  ココロは、老人の介護をしていて、かなりの人気を誇っていた。でも、ココロには隠している何かがあるという。その隠し事が重いほど、久住も奥まで踏み込まなくては真実を見る事ができない。 『木積さんは、ココロさんとホテルに入ったようなので、身体の相性も分かるでしょう』  しかし、木積も迷いが少ない。出会ってすぐに、ホテルに行ってしまうのか。 「相性ってさ、木積さんの人外のパワーと合う人というのは、凄いよ……」  木積のパワーに見合う人というのは、やはり人外のような気がする。 『そうでもないですよ。木積さんは、久住さんを相手にするから、人外になってしまうのですよ……』   それは、木積が久住を、運命の相手で離さないと真剣に思ってしまったので、手加減が出来なくなっていたらしい。ちゃんと距離感を掴めていれば、木積のパワーも押さえられるはずだという。 「運命の相手なのか……」  しかし、久住は嫌がっていたような感じがある。久住は、幾度も尻を裂かれてしまい、椅子にも座れなくなったと言っていた。久住もそれなりに感じてはいたが、後遺症にも苦しんでいたらしい。 『食と性も似ていますかね……』 「……だね……」  寒河江と世間話をしていると、いつの間にか爆睡してしまった。
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