第九章 明日を忘れた君へ 四

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 目が覚めると、当たり前のように俺は松下を枕にしていて、どういう体勢で眠っていたのか、分からなくなっていた。俺は隅で一人で眠っていたと思ったが、いつの間にか後部座席を倒して、松下を枕にしていた。 「????」  どう考えても、寝返りでは椅子までは登れない。 「まあ、いいか……」  松下が眠っていたので、そっと車の外に出ると、久住が起きていて顔を洗っていた。俺も横で顔を洗うと、身支度を整えた。 「ココロは、凄く満足したと俺に連絡してきたよ。もう一晩中、絡んで抱かれて、突かれたとあるよ」  ココロは、男の相手はいたが、抱かれたのは初めてだったらしい。でも、すぐに慣れて、自分から跨って堪能したとあった。 「ココロも、凄いね……」  ココロは、木積を気に入り、又会いたいと久住に相談していた。 「やっぱり、木積の相手ができる人は、他にもいるのさ……」  久住の声は、心なしか沈んでいて、携帯電話を落しそうになっていた。  ココロは、自分と木積が寝た事を証明するように、動画でも送ってきていた。その動画を見てみると、気持ち良かったと言いながらも、ココロの顔は蒼褪めていて、笑顔も引きつっていた。ココロは、久住と同じ様に、座るどころか歩く事も困難になっているのに、木積の前では媚びていた。  初めてで、木積を受け入れたとなると、相当無理をしたのではないのか、ココロは、木積の指を入れられただけで、脂汗を流しているように見える。更にココロは、木積の指で内臓をまさぐられると、鳥肌を出していた。  ココロは嫌がっているようにしか見えないが、久住へ届いた感想は、最高とか、気持ちいいとかの文字が綴られていた。  映像と文字のギャップがあるので、つい真剣に映像を見てしまった。すると、久住は近くのベンチに腰を降ろした。 「真実が見えましたか?」  ココロの真実は見えないのではなく、久住は見なかったのかもしれない。 「ココロには、心が無い。だから、見えなかったのかもしれない」  ココロは、命令や指示のままに動いていて、機械か人形のようであった。真実が見えないのではなく、ココロには真実が無かった。 「でも、ココロは木積に抱かれて、体が悲鳴をあげていると、初めて気付いた……その時の恐怖に圧倒されてしまった……」
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