第一章 人知れず咲く花

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 桜本がドアから出てゆくのを見送ると、俺は押し入れを見た。 「甲斐さ……、……そうか……」  いつもならば、真っ先に死保から出て行った、甲斐が成仏してしまっていた。 俺はつい、甲斐を呼んでしまい寂しくなる。  でも、甲斐のお陰で分かった事もある。  死保のメンバーは、自分の死を知っても成仏できない場合があり、 それは残るという意思と、未練であった。 甲斐は、現世で織田という恋人と大恋愛をし、成仏が加速していった。 愛というのは、心を満足させ、成仏を促す作用があるらしい。 でも、甲斐は実体が消えるまで、織田と一緒にいる事を選んだ。
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