第一章 人知れず咲く花

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 狭い室内には、カチカチとキーボードを叩く音が響いていた。 無言でパソコンの操作をしているのは寒河江で、ボサボサの髪と着崩れた ボロボロの服を着ていた。  寒河江は、集中すると飲食も、生活も忘れて、下手をするとトイレも忘れて没頭してしまう。 もう死んでいるからいいものの、生きていたら倒れているだろう。 「寒河江、休憩しようよ……」  俺はパソコン画面の横に立ちながら、寒河江を見上げてみた。 いつも寒河江は顔色が悪いが、今もかなり悪い。 「もう少しで……何か分かりそうなのですよ」  寒河江は、捜査一課の雨之目からの依頼を受け、パソコンでデーターを分析していた。
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