第十四章 残酷な神とやさしいボク 四

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 松下の部屋に到着すると、相変わらず生活感が無かった。 松下は一人でいると、飯もろくに食べずに仕事に没頭してしまう。 キッチンなど使った形跡もなく、冷蔵庫の中にはミネラルウォーターしかない。  週に何回か、業者に掃除をして貰っているせいなのか、整理整頓され埃などもないが、 その分、閑散としているようにも見える。 「田舎に家を購入して、一緒に住もう」 「既に五人町という田舎で、一緒に住んでいますよ」  俺がエビの下ごしらえを始めると、松下と明海が同時に溜息をついていた。 『市来、分かっていないな。二人で住もうという意味だよ』  明海は窓辺に移動すると、丸まって眠ってしまった。 明海も能力を使うせいなのか、眠る時間が長くなってきたような感じがする。 「メニューは何かな?」 「エビマヨと、エビ団子のスープ、エビ餃子です」  エビばかり買ってしまったので、エビ料理しかできない。 エビシュウマイを造ろうとしたが、松下の家にはフライパンと鍋しか無かった。
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