8人が本棚に入れています
本棚に追加
天才を守り囲い育てる庭 ジュビリーガーデン
「やぁ、ツバサ。こんないい天気にすまないね」
彼の、あるいは彼女の言うとおり、良い朝だった。
ベッドから身を起こすより早く、枕元の黒電話に促され__『やぁディア、実はいま紅茶を入れたところでね』なんて演技めいた口調だった__私は急ぎ顔を洗って寝室棟の外、ガーデンの中心にあるサンルームへと呼び出された。
「ジュビリーさん、おはようございます。」
「ふむ、たたき起こしてしまったかと思ったけど全然眠そうではないね」
私を呼び出した主は、緑や本に囲まれて優雅に紅茶をたしなんでいた。
陽の光がたっぷりと降り注ぐ植物園のようなサンルームで一人、まるで書斎にいるかのように本の山に囲まれた姿は、ただ美しいとしか形容できず、私は今日に至るまでその性別を知ることができないでいる。
「いい天気なので目覚めの気分も爽快ですから」
「そうかい」
私はずれてきた大きな眼鏡の位置を直した。手をあててくいっと数センチ持ち上げたところで、優雅に紅茶を傾ける万能人ジュビリー=ボロウがまさか【ダジャレ】を言ったのではないかと思い至るが、数秒経ってしまっていたので、私はただ小さく首を傾げた。
「…………」
「……」
最初のコメントを投稿しよう!