0人が本棚に入れています
本棚に追加
その手に持つもの
肌を突き刺す様な澄んだ空気が街を覆っていた。
誰も彼もが外套を羽織り、マフラーを巻き、凍えながら歩いている。
しかし目の前にいる風変わりで、少し気になる彼女は、驚くべきことに手袋もせず手を丸出しにしている。
B「寒くないのか?」
A「大丈夫だよ! 中に何枚も着てるからね」
B「いや、そうじゃなくて手だよ、手」
A「手?」彼女は不思議そうに自分の手を見つめた。
A「そうか、手袋してないからね。大丈夫、これなんだと思う?」
そう言って薄茶色の小包を僕に見せた。
僕へのプレゼントではないかと秘かに期待しつつ、どぎどきしながら尋ねた。
B「なんだろう。誰かへのプレゼントとか?」
ところが思いがけない答えが返ってきた。
A「違うよ。これはホッカイロ!」
B「え」
彼女が持つそれは、僕の知っているホッカイロとは違っていた。
明らかに巨大化している。
A「これ、すごくあったかいんだ。君にもあげるよ」
彼女はそう小包から使い捨てカイロを一つ取り出した。
B「え……。まさかその中にカイロが大量に?」
A「そう! その通り。ちょっと重いけど、かなり暖かいよ」
差し出された使い捨てカイロを受け取りつつも、内心困惑していた。
これは僕へのプレゼントと言えるのだろうか。
いや、そもそもあのホッカイロは危険ではないのだろうか。
あれを作るのにいくらかかるのだろうか。
こうして僕はいつも彼女に振り回される。
最初のコメントを投稿しよう!