その手に持つもの

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その手に持つもの

肌を突き刺す様な澄んだ空気が街を覆っていた。 誰も彼もが外套を羽織り、マフラーを巻き、凍えながら歩いている。 しかし目の前にいる風変わりで、少し気になる彼女は、驚くべきことに手袋もせず手を丸出しにしている。 B「寒くないのか?」 A「大丈夫だよ! 中に何枚も着てるからね」 B「いや、そうじゃなくて手だよ、手」 A「手?」彼女は不思議そうに自分の手を見つめた。 A「そうか、手袋してないからね。大丈夫、これなんだと思う?」 そう言って薄茶色の小包を僕に見せた。 僕へのプレゼントではないかと秘かに期待しつつ、どぎどきしながら尋ねた。 B「なんだろう。誰かへのプレゼントとか?」 ところが思いがけない答えが返ってきた。 A「違うよ。これはホッカイロ!」 B「え」 彼女が持つそれは、僕の知っているホッカイロとは違っていた。 明らかに巨大化している。 A「これ、すごくあったかいんだ。君にもあげるよ」 彼女はそう小包から使い捨てカイロを一つ取り出した。 B「え……。まさかその中にカイロが大量に?」 A「そう! その通り。ちょっと重いけど、かなり暖かいよ」 差し出された使い捨てカイロを受け取りつつも、内心困惑していた。 これは僕へのプレゼントと言えるのだろうか。 いや、そもそもあのホッカイロは危険ではないのだろうか。 あれを作るのにいくらかかるのだろうか。 こうして僕はいつも彼女に振り回される。
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