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顔面に走る痛みを堪えながら、左フックと右アッパーを打ち返す。左フックは右手でブロックされたが、右アッパーが顔面を捕らえた。後ろに揺れる相手の顔面。ファイティングポーズを取りながらも、動きの止まった相手に、ストレートを中心に左右の拳でラッシュをかけてロープに追い込む。
ロープに追い込まれながらも、両腕のガードを崩さない相手に、体の回転力をフルに活かして、フックとアッパーを中心に、ショートストレートを交えてのコンビネーションを上下に分けて打ち捲くる。殆どのパンチが両腕のガードの上に当たってしまう結果になってしまったが、数発は顔面とボディーに突き刺さっている。
いける!
そう思った時、第一ラウンドの終了を告げるゴングの音が鳴り響いた。割ってはいるレフェリー。拳を軽く合わせて、お互いのコーナーに戻る。
「おい、何やっているんだ。勝ちたくないのか」
セコンドから激が飛ぶ。
「勝ちたいに決まっているじゃないですか」
負けずに大声で、まくし立てる。
「だったら行け。いいか、相手は打ち合いを嫌がっているんだ。距離を取って、軽めのパンチを数打つだけだ。恐がるな。相手のパンチにKOする破壊力はない。思いっきり懐に飛び込んで、打ち捲くれ。分かったか!」
「はい!」
気合でも入れなおしているような返事を返す。
やがて、セコンドアウトの指示。再び響き渡るゴングの音。第二ラウンドの開始だ。
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