転落

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 俺は少しおどおどした中年男から、四万円を貰い、マリーさんに連絡を取った。マリーさんは三分くらいでここに来た。この辺に待機していたみたいだった。 「あー、社長さーん。お久し振り。今日も楽しくいい事しようね」  笑みを浮かべながら甘い口調で、話し掛けるマリーさん。マリーさんはその中年男と腕を組みながら、近くのホテルへと入って行った。  初めての割には、上手くいったものだ。自分に感心している俺がいた。 今日は、こんな感じで交渉をやりながら、十人の客を捌いた。俺にとって、名前と顔が一致しているのはマリーさんだけだったが、マリーさんから渡された他の娘達の写真を使って、何とか切り抜けることが出来た。早いとこ、女子達の名前と顔を覚えることが、先決であることに気付かされた。  今日の上がりは、三十五万円。内、俺の取り分は五万円。残りは、女の子達で分け合った。捌いたお客の数に合わせた配分で。  一日で五万円の仕事。上がりがよければ、もっと稼げる。悪い仕事じゃない。俺は暫くこの仕事を続けることにした。     
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