転落

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 マリーさんと出会い、勢いで売春関係の仕事を始めて、三ヶ月が経過した。女の子達の顔と名前も覚えたし、客との交渉にも少しは慣れてきたが、客の足元の見方が未だに慣れない部分だ。少しでも安くしたい客。少しでも金額を釣り上げたい俺。中々まとまらない世界に、苛立ちを覚えてしまう時もある。けど、そこは我慢だ。そこを纏め上げるのが、俺の仕事だ。  今、俺が覚えた女の子達は、全員で二十五人。女の子達からは、 「直で客と交渉しなくて済むから助かる。私達だと、最後は値切られちゃうからね。それに、文句を言う客がいなくなったよね。やっぱ、用心棒がいると違うわ」 とありがたい言葉を、いつも貰っている。こんな俺でも、少しでも役に立っていると言う事か。嬉しい事だ。やっている事は、法律違反だけど、アウトローになった気分も悪くない。  それにしても、収入は常に不安定だ。稼ぎがいい時は、一日に数十万なんて時もあるが、一日頑張っても、ゼロなんて時もある。月平均の稼ぎは、二十五万円くらいだろうか。 けど、この収入もいつまで続くか分からない。女の子達が、辞めてしまえばそれまでだ。今のところ、止める娘もいれば、新しく入って来る娘もいるので、何とか安定感はあるにせよ、やっている事は違法行為。警察につかまったら終わりだ。毎日が、背水の陣みたいなものだ。 だから、俺の生活に大きな変化はない。アパートを借りずに、安ホテルに寝泊りしている毎日だ。こんな生活でいいのだろうか。時折、自分に疑問を投げかけてみる。今の現状が、どうにもならない事くらい、分かっていながら……。     
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