出会い

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その建物の入口を飾る、蛍光ピンクのネオンがちらつく。入口を入ると、目の前には急な階段がある。灰色のカーペットのような物が敷かれていて、ゆっくりと踏み染めながら降りていく。  階段が終わると、地下室に入る訳だが、そこに三軒の店が、ひしめき合っている。  俺がよく行く店は、真ん中の店だ。『ラファエル』という名のショットバーだ。俺は、木製の少し重みのある飾りっ気の無いドアを開け、いつものように店の中にはいる。 「あっ、いらっしゃい」  女性バーテンダーのルイさんが、いつもの挨拶をする。長い黒髪にエキゾチックな雰囲気のある顔立ち。ルイさんが醸し出すどくどくの雰囲気が、何となく気に入り、俺はこの店によく来るようになったのかもしれない。 今日も相変わらず客が少ない。いつになっても、人が多くてうるさい所は苦手な俺にとっては、とてもいい環境だ。  俺はいつも座っているカウンターの所に座り、一人で酒を飲む。いつも飲む物は決まっているので、何も言わずに、目の前にはいつものカクテルが置かれている。 「勇君、調子はどう。今日は、仕事のあがりが、いつもより早いんじゃない」  微かな笑みを浮かべながら、話し掛けてくれる、ルイさん。 「今日は休み」  素気なく、答える。     
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