出会い

3/20
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/130ページ
時々、女の子達の集りが悪かったり、客の引きが極端に悪そうな時は、商売が休みになってしまう時がある。これと言ってやる事のない俺にとっては、死ぬ程暇な夜になってしまう。そんな夜を一人で過ごすくらいならと思い、ついついここに来てしまった。  照明はやたらと薄暗いけど、ちょっとお洒落で静かな雰囲気のこの店が好きだ。又、夜のしじまでも演出するかのようなジャズが、ゆっくりと店内中を流れている。音楽については、よく分からないけど、ここで聞く事が出来る音楽が何となく好きだ。静かで、何処かスリリングな感覚を味わうことが出来る。心の中に響いてくるスイング感が、何ともいえない。 自分のためだけの時間が、静かに流れていく。自分が落ち着くことが出来る場所。もしかしたら、俺はそんな場所を、捜し求めていたのかもしれない。  カクテルを飲みながら、ふと視線を右に送る。一人の若い女性がカクテルを飲んでいた。俺の視線は、暫くその若い女性に釘付けになった。  髪は短めかな。軽いウエーブがかかっている感じだ。目鼻立ちはしっかりしている。引き締まった感じの表情がいい。服装はシャツにジーンズとラフだけど、綺麗な人だ。いや、美人だ。砂漠に咲いた、一輪の花みたいだ。こんな薄暗い空間の中でも、キラキラと輝いて見える。 けど、何で一人なのだろう?それに、何故、そんなつまらなそうな表情で、カクテルを飲んでいるのだろう?     
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!