転落

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 俺が相手を追い詰めるシーンもあったが、有効打はなかった。逆に相手との距離を詰めるさいに、何発か相手のを貰っている。効いてはいないが、ジャッジの印象は悪かったかもしれない。 「おい、真正面から突っ込んでばかりじゃ、いつかカウンターをとられるだろうが。もっと体を左右に振れ。それから、懐に入り込んだら、パンチを上下に打ち分けろ。分かったか」 「はい!」  インターバルはいつも、こんな感じだ。指示の通り事が運べば、何の苦労もいらない。はっきり言って、楽勝だ!  しかし、そんな思いを払拭するかのように、セコンドから怒鳴り声のような激が、再び飛んでくる。 「いいか、掴まえたら逃がすな。一気に勝負にもっていけ。ぶっ殺すつもりでいけ!」 「はい!今度追い詰めたら、必ずぶっ殺します!」 「その意気だ!行ってこい!」  ゴングの音と一緒に、セコンドに思いっきり背中を叩かれ、リングの中央へと向かう。 追い詰めたら、ぶっ殺す! やるしかない!  相手と拳を合わせると同時に、俺は左右の拳の連打で突進した。不意のラッシュに驚いたのか、相手はガードを固めて下がりだした。  反撃も左ジャブを数発放つ程度だ。  いける!  このラウンドで倒す!  そう思った俺は、一気に左右の連打を加速させ、体をくっつけようとしてくる相手を押し返し、ついにコーナーへと追い込んだ。     
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