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気合を入れたかいもあって、今日は二十一名の客を捌いた。稼ぎは七十万円、俺の取り分は十万円。一日の稼ぎにしてはかなりいい方だ。俺は十万円をポケットにしまい込み、帰ろうとした時。
「ねえ、勇樹くん。この前、動物園で一緒にいた娘、彼女なの」
突然、マリーさんが話し掛けて来た。
「えーまー。彼女だよ。今、一緒に住んでいるんだ。って言うか、マリーさんもいたんだ。気がつかなくて、ごめんね」
「いいのよ。凄くいい雰囲気だったから、遠くから見ていて、見つからないようにしていたの」
「そうだったんだ。何か、気を使わしてしまって」
マリーさんは、俺に彼女が出来た事を、喜んでくれている感じだった。
「ところで、勇樹くん」
「なんだい」
「私から誘っておいてなんだけど、彼女のためにも、この仕事から足を洗った方が、いいんじゃないかな。それに、彼女、勇樹くんの仕事の事とか、知っているの?」
「そうしたくても、俺にまっとうな仕事先はないでしょう。それに、彼女、俺の仕事内容を知っています。暫くは大丈夫だと思うけど」
確かに優には、仕事の事について、話してある。けど、仕事内容が危険を伴う内容なだけに、いつも心配をかけているのも事実だ。
時々、朝、俺が寝ている姿を見ると、安心するって言っていた。
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