二人だけの時間

2/26
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/130ページ
 気合を入れたかいもあって、今日は二十一名の客を捌いた。稼ぎは七十万円、俺の取り分は十万円。一日の稼ぎにしてはかなりいい方だ。俺は十万円をポケットにしまい込み、帰ろうとした時。 「ねえ、勇樹くん。この前、動物園で一緒にいた娘、彼女なの」  突然、マリーさんが話し掛けて来た。 「えーまー。彼女だよ。今、一緒に住んでいるんだ。って言うか、マリーさんもいたんだ。気がつかなくて、ごめんね」 「いいのよ。凄くいい雰囲気だったから、遠くから見ていて、見つからないようにしていたの」 「そうだったんだ。何か、気を使わしてしまって」  マリーさんは、俺に彼女が出来た事を、喜んでくれている感じだった。 「ところで、勇樹くん」 「なんだい」 「私から誘っておいてなんだけど、彼女のためにも、この仕事から足を洗った方が、いいんじゃないかな。それに、彼女、勇樹くんの仕事の事とか、知っているの?」 「そうしたくても、俺にまっとうな仕事先はないでしょう。それに、彼女、俺の仕事内容を知っています。暫くは大丈夫だと思うけど」  確かに優には、仕事の事について、話してある。けど、仕事内容が危険を伴う内容なだけに、いつも心配をかけているのも事実だ。 時々、朝、俺が寝ている姿を見ると、安心するって言っていた。     
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!