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左右のストレートの四連打を打ち込み、左フックをガードの上に叩きつける。
ガードが上がり気味になったところに、左アッパーをボディーにめり込ませ、更に返しの左フックで相手のガードを吹き飛ばし、ガードから解放された顔面に、渾身の右ストレートを打ち込む!
なっ!
相手は膝を曲げ、俺の右ストレートを交わし、低い体勢から、俺のボディー目掛け、右ストレートを飛ばしてきた。
俺のボディーにめり込む右の拳。体内に伝わって来る、息苦しさを伴う嫌な重い痛み。メディシンボールの衝撃とは比べ物にならない。
きつい……
ボディーにカウンターでパンチを喰らい、注意が下に行ってしまったところに、左フックが顔面の右顎に叩き込まれた。
顔面が右側に傾き、脳が思いっきり揺らされた。
一瞬、目の前が真っ白になり、思考能力が消え失せた。そして、両膝から全身の力が抜けていくような感覚に襲われた。
俺は何処に行ってしまうのだろう……俺はトリップ感覚に、飲み込まれていった。
気がついた時は、俺は大の字に倒れていた。セコンドを務めてくれたジムの会長の顔がぼやけて見える。リングを照らす青白い照明が、やたらと眩しい。
「会長、試合は?」
俺は全身に痺れを感じながら、何とか口を開いた。
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