転落

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転落

かん高い金属音が響く! 試合開始を告げるゴングの音だ!  俺は青いグローブをはめた両手の拳を、数回軽くぶつけ合う仕草をして、リングの中央に向かう。  俺は、勇樹 昌宗、(ゆうき まさむね)プロボクサー。高校時代にボクシングを始め、高校を卒業したと同時にプロのライセンスを取り、今日で十戦目を迎えた。俺にとっては、一つの節目となる試合だ。 負けられない。 デビューして、九戦七勝二敗。八勝目を是非挙げたい。  今回の相手は、デビューして、十戦五勝五敗。絶対に負けられないと言うことでは、相手も一緒だ。  リングの中央で、お互い拳を合わせる。  試合開始だ!  お互い、ジャブを数発か挨拶のように放ったと同時に、左右の拳の連打による打ち合いになった。試合総ラウンド数は、六ラウンド。相手の様子を覗っている暇なんかない。練習で身につけた複雑なコンビネーションブローなんて、頭の中から消え去っている。  いきなり至近距離での打ち合い。飛んで来るパンチを何発も喰らおうと、構わずこっちもパンチを打ち捲くる。左右のストレートを連打しながら、フック、アッパーを交え、上下に打ち分けながら突進する。     
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