出会い

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出会い

 俺が売春関係の仕事をやることになって、初めて覚えた事がある。酒の味だ。高校を卒業して、プロボクサーへの道を選んだ俺にとって、酒を飲む機会など全くなかった。と言うか、酒、煙草は禁止だったから……。 仕事が終わると、時折、マリーさんに居酒屋に連れて行かれた。最初は、ビールの苦さに渋い表情をして笑われたり、無理して飲んでトイレで吐きまくって、マリーさんに介抱されるはめになったりと、慣れない酒に苦労していた。しかし、最近では酒の味と言う物を理解する事が出来たのか、何の問題もなくなった。と言うか、時折、体がアルコールを求めているような感覚さえする。  実は、俺にはお気に入りの店がある。そこには、いつも一人で行くから、マリーさんも知らない。俺にとっては、隠れ家みたいな物かもしれない。 人気の少ない狭い通りに立っている雑居ビル。周りの建物と比べると、かなり汚れていて、色彩感が全く感じられず、高さもなく、大きい建物群の中に埋もれている感じだ。     
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