28人が本棚に入れています
本棚に追加
/130ページ
告白
俺は約束通り、大きなバッグを二つ抱えて、優に書いてもらった地図を頼りに、優の部屋へと向かう。少々分かりづらかったけど、優の住んで居るアパートに何とか辿り着いた。
それにしても、ぼろいアパートだ。三十年くらい前に建てられたのではないかと、思うくらいの建物だ。壁の色はくすんでいて、元の色が分からないし、屋根の瓦なんて、今にも落ちてきそうな雰囲気だ。しかも、階段の手摺りは錆びていて、あっちこっちのペンキが捲れ上がり、剥げかかっている。
本当に優はここに住んで居るのか?とても、若い女性が住んでいるとは、思えない外見をしているアパートだ。
何故、こんな所に?家賃が安いからかな。分からない。
「勇くーん」
下を向いて考えていた時に響いた、優の明るい俺を呼ぶ声。優の声に反応して、頭を上げる。
優が部屋から出てきて、笑顔を浮かべながら、小走りで近づいて来る。
「ごめんね。途中まで迎えに行こうと思ったんだけど、行けなくて。けど、その地図でよくここまで来られたね」
「何とかなったよ。けど、その地図でって、優が書いた地図じゃなかったっけ」
「あっ、そうだよね」
照れ笑いを浮かべる優。
最初のコメントを投稿しよう!