尻治の始まり

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二月に入ると微熱が続いていた事すら黙っていたが、一日ひと箱以上吸っていた煙草もピタリと吸わなくなり、咽るように咳き込み出せば肺炎や肺ガンを心配し痺れを切らしどこでもいいからと近くの病院へ連れて行った。 「気管支炎だね」 あれほど心配したのにあっけないほど簡単に診断は下され、炎症を抑える薬に抗生物質と解熱剤を五日分貰った旦那はこの頃にはリンゴすら食べなくなり、口にするのはゼリーばかりだし  「食欲がないんです」と言っても「当然でしょう。」と突き放される。 貰った薬を飲み終え、咳は止まったが熱は下がるどころか上がっていた。 「俺はあれだけ心配して色々としてやったのに お前は俺に何もしてくれない! ゼリーくらい買ってきてくれたっていいだろう! お前が具合が悪くなってももう心配してやらないからな!」 家に帰ればゼリーを買ってきてと言われ、お金も無いし疲れてるし面倒臭いと言えばギャーギャーと怒鳴り散らす。 そんな元気があるんなら普通にご飯を食べて欲しい。 もちろん旦那の事を心配しているし、嫌がる旦那を病院へ連れて行ったし何度かゼリーだって買わされた。 私は妻であって家政婦でも召使でも無いし、私が具合が悪くなっても旦那は家族の食事を作ってくれる訳でも無い。 一度ゼリーを買うのを渋っただけでそこまで言われる筋合いは無いし、これ以上何をどう尽くせばいいのだろう… 悔しくて悲しくて… 傷付いて、旦那の顔を見るだけで目頭が熱くなった。
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