最後のホームルーム

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「僕はまず教室の時計を遅らせました。そして、登校してきた先生に声をかけて、大学生になったら腕時計買いたいから先生のもちょっと見せて欲しいと言って触らせてもらいましたよね。そのとき、ちょっと操作したんです」 確かに朝方、そんなことがあった。 「こうして仕掛けは終わったのですが、成功するかどうかは五分五分と見ていました。もし、途中で誰かが時間が違うことに気付けば失敗です。誰もいない教室が爆破されることになったでしょう。この人の計画通り」 彼は一度息を大きく吸い込んだ。 「それは賭けでした。もし成功すれば復讐を成し遂げられます。僕もその後生きて行く自信はないのでもちろん一緒に死ぬ覚悟でした。そして、実際は僕の計画通りにことは運びました。この人が教室に入ってきたときは万事休すか、と思いましたが、そのときすぐドカーンですからね」 すべては計画通りというわけか。 「これはみんなへのお返しなんです。仕返しって言っちゃうと悪いことしてるみたいじゃないですか? 僕は悪いことなんて何もしてません。みんなが喜んで僕にやったことを僕はみんなにお返ししただけなんです」 彼は最後は力強く言い切った。 「ほら、僕もだんだん消えてきましたよ」 山口の体は少しずつ消えている。それと同時に俺は自分の体が消えつつあることにも気づいた。そして犯人の男も…… 「真相がすべて明らかになったから、犯人の男も未練がなくなったか……」 俺もようやく成仏出来る。でも、その前にやるべきことがある。 「山口、本当にすまなかった。俺はお前を助けることが出来なかった。学校に報告すれば、俺が教員免許がないことまでバレてしまう危険があったからだ」 「それって本当だったんですか」 消えゆく山口が最後に驚いた表情を見せる。俺はうなづいた。山口が消えた。最後に「校長先生、ありがとう」と言い残して。横を見るともう犯人の姿もなくなっていた。
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