最後のホームルーム

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「校長、あなたは……」 俺はまだ消えていない校長を問いただした。 「清水君、さっきは怒鳴って悪かった。実は私は随分前から山口君がイジメられていることを本人から聞いていたのだ。担任は頼りにならないからと、私のところに直接訴えにきたのだ」 それは知らなかった。そんなことをしていたのか。 「私は体面上、イジメを公にするわけにはいかなかった。しかし、山口君の話を聞いてそのまま放っては置けないと思ったんだ。でも彼は私が話をきちんと聞いてくれたととても感謝していた。あの子にとっては話す相手すらいなかったんだろうな」 校長は早口で説明を続けた。 「そして、今朝、メールで彼の計画を告げられた。教育者ならば本来それを止めなくてはならないのだろうが、私はそれを黙認した。それどころか、時計のトリックに気づかれないように清水君を監視していた。私がやろうとしたことは人として間違ってるかも知れない。しかし、山口君の気持ちを考えると、私も罪を背負うべきだと思った」 校長は悲壮な表情を見せた。 「3年B組が遅れているという報告を聞いた時、彼は賭けに勝ったんだ、と思った。私は最後の詰めとして、君たちが教室を出ないようにするために教室に向かったんだ」 そうだったのか…… 「これで私の告白も終わりだ。どうやらこれで、私も成仏出来そうだな」 校長の体がどんどん消えてゆく…… 「清水君も元気でな」 そう言い残して、校長も完全に消えた。 元気でなって、それはおかしいだろう。俺は笑いがこみ上げてきた。そして…… 「みんなごめんな。全部俺が悪かったんだ」 俺は誰もいなくなった教室で独白した。 「俺は卒業式が終わったら自ら命を絶つつもりだったんだ」 聞いてるものは誰もいないが、構わず俺は続けた。 「生徒たちに散々馬鹿にされてもう生きてゆくのが嫌になってな。そんな時、爆弾がセットされるのを見た俺は、そのあと山口が工作するのも見て、付き合ってやることにした。これなら楽に命を絶てるし、何より3年間、陰で俺を馬鹿にし続けた生徒たちを見返してやれるんだ。これはお前たちが犯した罪のお返しだ、そう自分に言い聞かせて俺はホームルームの教壇に立ったんだ。時間が違っているのは承知の上でな」 独白を終えた俺は、もう完全にこの世に未練はなくなった。俺の体ももうすぐ消えてしまうだろう。もはやそれを見届けるものは誰もいない。
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