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「校長、清水先生のクラスがまだ来てないみたいです」
1年の担任の吉永先生が焦った様子で報告してきた。卒業式が行われる講堂には、すでに卒業生も在校生もほとんど集まっている。
「どうしたのかな? 私が声をかけてきましょうか」
竹内教頭がすかさず立ち上がろうとする。
「いや、私が行こう。最後くらいは私に仕事させてくれよ」
私が珍しく急に乗り気になったので、教頭も吉永先生も驚いた顔をしている。私は5年間勤めたこの青海高校の校長を今年度で退任することになっていた。私は少しでも最後の卒業生の様子を見てみたかった。
「じゃ、行ってくる」
私は3年B組の教室に向かって歩き始めた。
*
一人の男が3階の教室に行こうと階段を必死で駆け上がっていた。
「やばい」
声を出さずにいられないほど、切迫詰まっていた。
どうしてこんなことになってしまったんだろう? こんなはずでは……
計画が狂ってしまったことを知ったその男は、階段を全力で登りきった。そして、3年B組の教室に向かう。前を歩いてるのは……校長?。前に見たことがあった。
「すいません!」
男はその大きな背中に向かって声をかけた。
*
今日は青海高校の卒業式 。3年B組の教室では最後のホームルームが行われていた。俺はクラスの生徒30人の前で、最後の挨拶をしていた。その長い挨拶も終盤に差し掛かった。
「みんな、今まで本当にありがとう!」
俺が泣きじゃくったその時、教室のドアが開いて、校長先生ともう一人見知らぬ男が入ってきた。
誰だっけ? どこかで見たような気がするが思い出せない。
「清水先生、この方が用事があるそうで」
邪魔が入ったな。でも、もう計画は止められない。俺は校長の言葉は無視して、衝撃の言葉を発した。
「みんな、よく聞いてくれ。俺はこの教室に爆弾を仕掛けた!」
生徒たちがざわつく。何事が起こったのか分からなくてポカンとしている生徒もいる。校長も男も唖然としていた。
「騒がないで! 動いたり騒いだりすれば、すぐに爆発させるからな」
俺はすかさず釘を刺した。
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