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「清水君、一体なんのつもりだね」
校長が近づこうとする。
「近づくなと言っただろ。死にたいのか!」
俺はドスを効かせた。
「先生、なんでこんなことするんですか?」
委員長の安藤がおそるおそる俺に尋ねた。さすが委員長、勇気のあるやつだ。
「それはだな……」
生徒たちが息を飲む音が聞こえる。
「なーんてな。実はな、一度やってみたかったんだ。だってカッコいいだろ」
俺は破顔した。
「けっ、信じたじゃねーか」
「何考えてんのよ、まったく」
「卒業式なのにアホなことやってんじゃねーよ」
「先生、馬鹿じゃねーの?」
生徒たちから安堵の声やブーイングが上がる。でも俺は大して気にしない。だって一度やってみたかったんだ。明日からこいつら学校来ないし、やれるのは今日だけだから。
「驚いたか? これがほんとの爆弾発言。なんつって」
これも生徒とのコミュニケーションの一環だ。校長、分かってくれるかな?
「でもな、お前たちがこれから社会に出れば、実際いろんな危険に遭遇するだろう。世界情勢は相変わらず不安定でいつ戦争が起こってもおかしくないし、テロの危険だってある」
俺はさっきとはうって変わって、真剣な表情で話した。
「そんな時、どうするか? 何が出来るか? それをお前たちには常に考えていて欲しいんだ。危機的状況の時でも、冷静に最善の手が打てる人間になれ! それがお前たちに送る最後の言葉だ」
この平和な日本で呑気に学生生活を送ってきた彼らにとっては、あまりピンとこない話かも知れない。それでもいい。いつかそんなことがあったと思い出してくれるだけで構わないんだ。
俺が何故こんなことをしようと思ったのか自分でもよく分からない。今朝、爆弾のことが急に頭によぎって、生徒たちにこの危機的社会の中で生き抜く術を伝えたくなったんだ。
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