48人が本棚に入れています
本棚に追加
「それにしても今の状況は一体……。第一、この教室は爆破されたはずだろう?」
「お気づきになられてませんか? この教室は実は1年B組の教室なんですよ」
あっ。言われてみれば、確かに3年B組の教室とは違うところがある。
「あなたたちは、この世に未練が残ったまま、成仏出来ないで3年間も校内を彷徨っていたんです。その間の記憶も多分ないと思いますが。そして担任のあなたが、たまたま彷徨ってたどり着いたこの教室に、元3年B組の生徒たちの霊が徐々に集まってきたんです。死んでもなお担任には惹きつけられるものがあったんでしょうね」
俄かには信じがたい話だ。
「そして、今日、全員が揃うとともにあの卒業式の日が再現されたわけなんです。あの日の出来事にみな未練があったんでしょうね」
未練……それはそうだろう。なぜ、自分がこんな目にあわなきゃならないのか、何も分からずに爆発に巻き込まれて死んでしまったのだから。
「そして、校長と私も磁石に引きつけられるようにここに来た訳です」
「しかし……どうして貴様だけ、記憶があるのだ? おかしいじゃないか」
「それはですね。未練の質が違うからですよ。皆さんは、なぜ自分が殺されたのか、誰が犯人なのか、それを知りたいっていうのが未練になっていると思うんです。でも私は犯人ですから、そうじゃない」
男は一呼吸おいて続けた。
「私は皆さんに謝りたかったんです。こんなことに巻き込んでおきながら虫が良すぎると思われるでしょうが、本当に申し訳なく思っているんです」
「今更謝って済む問題じゃないだろ!30人もの将来ある命を奪ったんだぞ!」
俺は怒声を上げた。
「それは重々承知です。ですが、あれは計画が狂ったせいなんです。本来なら、皆さんは死ぬはずではなかった。誰もいない教室が爆破され、大事件になるという展開だったはずなんです」
最初のコメントを投稿しよう!