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「そして、僕がどうして消えないか、です」
山口の言葉に、俺は再びはっとする。
「それは僕がみんなを殺した犯人だからです」
えっ……あまりの衝撃に俺は言葉を失った。
「時間を誤認させ、皆を教室にとどめ、爆発に巻き込ませたのは僕なんです。校長はただの巻き添えですけどね」
「ど、どういうことだ?」
「先生も本当は知ってたんじゃないですか? 僕がイジメを受けていたことを」
それは……確かに俺は薄々感づいてはいた。山口がそれとなく俺に伝えようとしているのも分かった。だが、俺は面倒ごとに巻き込まれるのが嫌で、それを無視した。
そしてたいして問題にならないまま無事に卒業を迎えたと思ったんだが。
「僕はずっとイジメを受けていました。直接的にも間接的にも。クラス全員共犯です。僕はクラスのみんなを恨みに恨みました。それでも実際に何かしようとは思っていませんでした。あの日あれを見るまでは」
「あれだと?」
「この人が爆弾をセットするところです」
男ははっとした表情を見せた。
「僕が朝早めに登校すると、教室にこの人がいて、何やら作業をしているのを発見しました。僕は隠れて様子を見ていました。この人が作業を終えて出ていったあと、近くに行って調べると、なんと爆弾がセットされているじゃありませんか」
山口は大袈裟に驚いたジェスチャーをした。
「僕は驚いて誰かを呼ぼうとしました。しかし、そのとき僕の中に悪魔の声が囁いたのです。今ならみんなに復讐できるぞって」
彼はその時の状況が蘇ってきてのか、苦悶の表情を見せる。
「爆弾は時限方式のもので、タイマーの時間を見たところ、ちょうど卒業式の開始時刻にセットしてありました。その時間、誰も教室にいないはずです。僕は咄嗟に犯人の意図を悟りました。誰も殺したくないんだな、と」
彼はどんどん続けた。
「僕はその悪魔の声に耳を傾けてしまいました。僕の心は恨みの強さに抵抗出来なかったんです。弱い心ですよね」
俺には彼を責める資格はない。
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