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一のまま零になる
空っぽの部屋には、音も灯りもない。そんな部屋の端、絨毯すらない場所に僕は腰を下ろした。
周りを見渡しても、家具は一切ない。理由は単純だ。家族に――父に置き去りにされたから。学校に行っている間に、家具ごと消え去ったのだ。
そう、僕は捨てられたのである。
僕は元々、家族から疎外されていた。母は別の男と逃げ、置いていかれた父は僕に暴力を振るうようになった。
そんな冷たい家庭にいては、他者と馴染める訳がない。浮いていた僕は、学校の人間に苛められてもいた。
そんな人生を経て、僕は人を怖れるようになった。
家族も他人も、全員滅びればいいと思っていた。絶望しかなかった。
それから数週間、居場所を失った僕に一通の手紙が届いた。僕にとって、それは一筋の光だった。
〔厳正な審査の結果、貴方様の氷棺が認められました。つきましては、下記の日付に指定場所へお越し下さい。〕
同封されていた510番のカードを手に、僕は何年か振りの笑みを零した。
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