零にはしない

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 ――ボタンに手を掛けて数秒、静かに音が鳴り出した。稼働を示す音だ。水が、少しずつ凍ってゆく音も聞こえだす。成功だ。  これで、未来までの時間を稼げる。  間髪要れず、棺桶へと足を掛けた。そうして、爪先から冷たい水中へと入り込む。数ヶ月前と全く同じ感覚だ。  けれど、あの日と違い、隣にはニキがいる。心の温かいままで凍っていける。  今なら思う。何度も置き去りにされたのは、きっとニキに出会う為なのだと。その為に、運命がそうさせていたのだと。  この施設に来たのも、この時代に目覚めたのも、君に見つけられたのも、全部運命の仕業だったんだと。  初めて愛した人と生きる為に。幸せな未来で、二人一緒に生きる為に――。  ニキ。この氷が溶けた時、きっと素晴らしい世界が待っているよ。そうしたら、また二人で生きようね。  それまでは、おやすみ。
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