6人が本棚に入れています
本棚に追加
指定された日時、僕は目的地に向かった。そこには、とても大きく、頑丈そうな施設があった。
入館し、顔を隠した職員にカードを見せる。すると早速誘導された。地下深くへと降りてゆく。
それぞれの階には長い廊下があり、狭い間隔で多くの扉が設置されていた。扉の全てに数字札が掛けられている。
部屋番号と階数は関係しているらしく、数字を見れば何階にいるかは直ぐ分かった。
「眠る年数によって指定部屋があるんですよ。個室なんですけどね。確か貴方は五百年でしたよね」
「はい」
「五百年後、何が変わってて欲しいです?」
「…………人が優しくなってて欲しいです。僕、一度で良いから人に愛されてみたいんです。幸せって感情を知ってみたい」
「それは素敵な願いだ。さぁ、着きましたよ」
長い廊下の先、510の札がある部屋に着いた。地下六階まで、長かった。
鍵を回し、職員が扉を開く。その小部屋の真ん中には、棺桶と作動装置のみが置かれていた。開けられた棺の中には、透明な水が入っている。
「では、入っていただけますか? 入り方は――」
説明通り、仰向けになって水に入った。浮力はなく、水の抵抗も感じなかった。顔面が浸かっても呼吸は苦しくなく、寧ろ自然と体に馴染んだ。
眠気を覚える。ゆっくりと五感が薄れてゆく中、声が聞こえた。
「来世では良い人生を」
それを最後に、ぷつりと意識が切れた。
最初のコメントを投稿しよう!