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「――いてるか!」
肩を叩かれ我に返る。続く苛立ちを、眉間に表し振り返った。そこには副部長が居た。
仕事中に、上の空はしょっちゅうだ。加えて常時不機嫌で集中力がなく、会社での成績は悪かった。
ゆえに上司からは疎まれ、攻撃の対象にされていたりもする。
「……また何か?」
低い声で問うと、上司は高圧的な態度で溜息を吐いた。
「入江、また聞いてなかったな。相変わらず駄目な奴だ。社員が転勤してくるって話、この間しただろう」
「はぁ」
腕組みまでされ、苛立ちが見て取れた。その態度で、更に腹が立ってくる。
「それ今日からだから」
「俺に何の関係があるんですか」
「入江に教育係を任せる」
「はい!?」
「姿勢を正す良い機会だ。彼、ここの仕事は初めてらしいからな、くれぐれも間違った事を教えるなよ」
一方的に吐き捨てると、上司は素早く去ってゆく。そこでやっと、背後に立っていたらしき男を認識した。
「本日より配属されました白石朝翔です! 宜しくお願い致します!」
爽やかな挨拶と同時に、顔面情報が脳に入り込む。その瞬間、全身に衝撃が走った。
「……君は……」
回顧していた記憶が、再び走馬灯の如く駆け巡る。あの顔を、名を、忘れられる訳がない。
白石朝翔――そいつは、僕の人生を壊した人間だ。
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