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それからも俺と白石は付き合いを続け、友と呼べる仲にまで発展した。言葉で確かめ合ってはいないが、白石が思っているのは態度から確信出来た。
「お疲れさま。今日も色々ミスってたけど大丈夫か? 最近、疲れてるようにも見えるけど」
飲み屋の片隅、ビールに口をつける。上目で窺った白石の顔には、明らかな疲労感が募っていた。
白石はと言うと、三杯目のジョッキを注文している。
「……話していいことか分からないんだけどさ」
運ばれたジョッキを持ち上げると同時に、重い口が開かれた。言葉を予想し、心が浮き立つ。だが、表面に出さないよう我慢した。
「妻の職場に、変な客がいたんだ……」
「変な客?」
「敢えて妻を名指しして、ありもしないクレームを付けて来る客。で、それが公衆電話からの着信らしくて。どう考えても変だよね?」
胸に秘めていたのか、白石は饒舌だった。だが、語りの流暢さとは裏腹に、瞳は深い心配を宿している。
「変だな。それで奥さんは大丈夫なのか?」
「話はまだ終わりじゃないんだ」
相当堪えているのか、白石はジョッキを盛大に傾けた。どんどん嵩が減り、一気に空になる。
「まだ何か?」
「実は、店にこんな紙が落ちていたらしい」
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