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彼女とは何度かご飯に行ったことある。ただ、仕事終わりの牛丼とかラーメンとかサクっと食べて帰れるような、そんな簡単なものばかり。仕事の話がほとんどで、プライベートなことを聞けるようなタイミングになる前にご飯が終わってしまう。ご飯を食べた日の帰りは彼女を家の近くまで送っている。家の前まで行かないのは、変な警戒心を持ってもらっても困るからだ。けれど、恐らく家が僕と近い。彼女と別れてから、来た道を少し戻り、橋の手前を右に曲がってそこから10分ぐらい。まぁ近いからといって何もない。
彼女について知っているのは、このことと結婚もしておらず彼氏もいないということぐらい。初めてご飯に誘う時、いくら上司とはいえ異性と二人きりというのは旦那や彼氏が嫌がるかも知れないとあらかじめ聞いておいた。
だから今日は彼女のことをもっと知れるいい機会かもしれない。
「お腹すきましたね。先輩は何食べますか?」
左右にある出店をキョロキョロと見渡しながら、彼女の瞳がこっちに向けられる。
透き通った瞳に、ぷっくりとした唇、髪がかけられた右耳からは碧色の雫形のピアスが揺れている。グレー色をしたスーツとスカートに透けそうで透けていないUネックの白シャツ。
いつも見ている姿なのに、祭りの雰囲気と夜風が合間っているせいか、色気が出ているように見えてしまう。僕の鼓動が早くなる。
「っ、そうだなぁ・・・。焼きそばにお好み焼きにたい焼きに、今なら何でも入る。」
いかんいかん、こんな不粋なことを考えていたら気づかれしまう。それに今日は彼女が手伝ってくれたおかげで何とか終われたんだ。
「笹ヶ瀬は何がいい?買ってくるから、向こうの木の下、場所取っててよ」
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