深夜二時

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「相手になってくれよ。他のヤツらじゃ面白くねー」 「先輩がガチガチにレア装備で固めすぎなんですよ。対戦相手が可哀相」 「だって、負けたくねーし」  「わがまま」と言って、五つも年下の後輩は笑う。愛しみが込められた柔らかい笑み。俺は見て見ぬふりをする。大人げない大人だからだ。気づいちゃいけない。気づいてしまえば、この関係が終わる。関係と呼べるほど親密な訳でもないが、『仲が良い先輩後輩』ではなくなってしまう。 「そのゲームじゃ勝てないんで、こっちにしましょうよ」  後輩は俺の服をちょいちょいと引いてから、テレビに繋いだ据え置き機を指差す。 「そっちなら勝てるってか? 俺のコントローラー捌き、ナメんじゃねーぞ?」  ニタニタと笑み、テレビのリモコンを探した。後輩は好きなソフトをゲーム機に飲み込ませ、慣れた風にコントローラーを配っていた。そうして表示された準備画面でキャラクターを選んでから、ポテチの袋を開く。「太りますよ」と後輩が言う。「デブ活してんだよ」と俺は返す。
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