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長かった。
毎日、毎日、必死になって我慢した。
どんなに痛くても苦しくても、私はその先を平穏に過ごすために今日まで耐えたのだ。
目を閉じていても何故か滲みるシャンプー。
息を必死に止めているのに、隙をついて鼻から絶対に入ってくるシャワー。
熱いのを我慢して数えることを強要される湯船。
私はお風呂が大嫌いだ。
しかし、5歳児である私は親の言うことを聞いて、嫌だと思いながらもお風呂に入るしかない。
そんな私を見かねた母は、ある提案をしてくれた。
「髪の毛は、1日洗ったら次の日は洗わなくてもいいよ。」
なんということだろう。
つまり1ヶ月毎日洗えば、その先1ヶ月は毎日洗わなくてもいいということだ。
私は早速、母に毎日シャンプーしても大丈夫だと伝えた。
今耐えれば、耐えた分だけ楽になれる。
謂わばシャンプー貯金である。
そうして、耐え抜いた1ヶ月。
とても長かった。
何度も滲みたシャンプー、鼻から入ってくる水、あの辛い日々が報われようとしている。
今日私は母に話すのだ。
これから1ヶ月シャンプーしなくて済むと考えるだけで、私の胸は高鳴った。
さぁ伝えなければ。
私の心臓は、異様にドキドキしていた。
「お母さん、私1ヶ月毎日シャンプーしたから、これから1ヶ月はしなくていいよね?」
言った、言ってやったぞ。
さぁ母よ、勝利の微笑みを投げかけてくれ。
その後、私は絶望という感情を初めて知った。
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