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落ちそうな涙に耐えるように鼻を啜ったところで、小さな神社の前に出た。
「え……?」
境内には一本だけだけど立派な桜が咲いている。
しかもライトアップするかのように街灯がひとつ、脇に立っていた。
「ここ……」
「……穴場なんだ」
桜の下、彼はくいっと眼鏡をあげた。
「きれい……」
もしかして、私に見せようと連れてきてくれたのかな。
無言で手を引っ張られるのは怖かったけど。
「その。
……ありがとう、ございマス」
「ん」
彼とふたり、黙って桜を見上げる。
風に乗ってはらはらと花びらが舞い落ちた。
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