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「だてに10年一緒に居るわけじゃないね」
「だな。以心伝心にも程があるだろ」
ケーキを口に運びながら、つい顔が綻んでしまう。
久しぶりのそのお店の味は、初デートの時とずっと変わらない美味しさだった。
「あ~……私、あなたに結構大事に思われてたのかな」
冗談混じりにそう言うと、
「当たり前だろ。
そうじゃなかったら、わざわざ定時にあがって車で一時間かけてケーキ買いに行くかよ」
夫は、少し気恥ずかしそうにそっぽを向く。
「え、定時にあがれたの?月末なのに!」
「部長にめっちゃ頭下げたわ、アホ。
……それほど、大事ってことだよ、――――」
いつ振りかわからないほど、懐かしい響き。
おい、でも
お前、でも
ママ、でもない、私の名前。
「ふふっ」
「……笑うな」
―――結婚8年目、
愛とか恋とか、口にはしなくなったけれど……
ほらね、
私達はこの先もきっと、こうやってやっていける。
だって、
「……“無敵になったんだぜ!”」
「あん?何だよ、それ?」
「なんでもなーい!」
Fin*゜
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