親孝行未遂

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親孝行未遂

「息子さんですか? お父様ですが、お亡くなりになっていました。」 埼玉県の新座警察署の刑事さんから折り返しの電話だった。 「そうですか、、、はい、わかりました。」と応える俺、刑事さんとは多分そんな会話だったと思う。 最期の時 親父が望んだこと それは、もう一度だけ俺をおんぶすることだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 埼玉にある2DKの安アパートで暮らす親父とお袋は60代、 まだまだ元気な同世代も居る年頃と思うが、うちの親父は50代で大腸ガンの手術もした、 時期を同じくお袋は乳ガンで片胸を切除していた。 ずっと寿司職人で生きて来た親父は、 ガンの術後に統合失調症を発症したお袋の世話をする為、勤務していた寿司店を辞め、 実家近所の倉庫でアルバイトをしていた。 お袋は自分自身のこと、一緒に暮らす親父のこと、数ヶ月に一度ペースで実家に行く俺のことも、もう誰だか完全にわからなくなってて、 親父のことを「知らない人だが共同生活している男性」 自分の旦那とは大昔に離婚をしている。 俺のことは「偽物の息子」と言う。     
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